シール材(ゴムパッキン)検査は、ガスケット・Oリング・パッキン等のゴム製密封部材が要求性能を満たすかを確認するための試験体系である。評価は大きく分けて、材料特性(引張・硬さ・圧縮永久ひずみ)、組成・熱特性(FT-IR・GC-MS・TGA/DSC)、密封性能(気密性・耐圧・リーク)の三層で構成される。本稿では、シール材検査の評価項目の整理から、検体の採取・前処理、各試験方法の実務上の要点、判定に用いるJIS・ISO・ASTM等の規格までを順を追って解説する。同種の化学分析手法は、β-メチルインドールの試験方法と臭気・毒性判定やノニルフェノールエトキシレートの試験方法と判定基準の解説でも扱っており、機器分析の基礎理解に役立つ。
の概要と評価項目
シール材検査の目的は、ゴムパッキンが所定の密封機能を長期間維持できるかを材料・組成・性能の両面から検証することにある。評価項目は通常、(1)材料物性:引張強さ、伸び、硬さ、圧縮永久ひずみ、(2)組成・熱特性:主ポリマーの同定、可塑剤・添加剤の定性定量、熱分解挙動、(3)密封機能:気密性、耐圧性、リーク流量、の三群に分類される。用途に応じて耐油性、耐オゾン性、耐老化性を加える場合もある。水道・食品接面部材では溶出物評価が求められ、対象物質の選定が重要となる。 sanit
検査計画の立案では、使用環境(温度・圧力・接触流体)と破損時の影響度を踏まえて項目を取捨選択し、受入検査か定期点検かで試験の深さを変えるのが実務的な考え方である。
検体(試料)の種類と採取・前処理方法
検体は、成品から切り出した円環状・板状試験片、実際の使用済みパッキン、量産前のコンパウンド(未加硫ゴム)に大別される。引張試験にはJIS K 6251等に従い dumbbell 状(ダンベル状)3号形などの定形試験片を打ち抜いて用いる。硬さ試験は成品のまま、または厚さを確保した試料で行う。組成分析用は、表面の付着物・離型剤を溶剤で軽く拭去し、細断または凍結粉砕して均一化する。溶出成分のGC-MS分析では、試料を所定の溶媒で抽出するか、加熱抽出(ヘッドスペース法)に供する。サフロール等の香気成分をGC-MSで測定するサッサフラス油の試験方法と同様、前処理の選定が検出感度と定性精度を左右するため、目的物質に合わせた抽出条件を事前に固めておく。採取記録(ロット、使用部位、経年情報)も報告書の追溯性に必要である。
材料試験:引張・硬さ・圧縮永久ひずみ測定
引張試験は、定速度で試験片を引き、引張強さ・破断伸び・100%引張応力等を求める。ゴムは粘弾性を持つため、試験速度と温度を規定どおりに制御しないと値が変動する。硬さ試験はデュロメータ(ゴム用硬さ計)によるタイプA測定が標準的で、厚さ不足や測定面の湾曲が誤差要因となるため、重ね合わせや平坦面の確保に注意する。圧縮永久ひずみ試験は、一定圧縮率で試料を挟み、所定温度・時間保持した後に除荷してひずみ残留率を求める。この値が大きいほど、フランジ面や溝に嵌め込まれた状態でのへたり、すなわち長期密封性の低下を意味する。実使用温度に近い条件を選定することが評価の妥当性を高める。三試験とも養護(状態調整)後の測定が原則であり、加硫直後の試料では化学反応が残存して値が安定しない点に留意する。
成分分析:FT-IR・熱分析(TGA/DSC)
FT-IRはポリマー種の同定に用いる。全反射(ATR)法であれば前処理ほぼなしで表面スペクトルが得られ、NBR・EPDM・フッ素ゴム等の帰属データベース照合で主材を判別できる。不明品の代替材選定や、異物混入品の鑑別に有用である。GC-MSは可塑剤、老化防止剤、低分子シリコーンオイル等の添加剤や溶出物の定性・定量に適する。抽出物の保持時間とマススペクトルの照合により成分を推定し、食品・水道用途では溶出規制物質のスクリーニングに用いられる。熱分析では、TGAが加熱減量からカーボンブラック・灰分等の配合比率を推定し、DSCがガラス転移温度や架橋関連の吸発熱をとらえる。TGAとDSCを組み合わせると、熱老化による組成変化や再生材(リサイクルゴム)混入の推定精度が上がる。測定条件は昇温速度・雰囲気ガスの規定値を守ることが再現性の前提である。
密封性能試験:気密性・耐圧・リーク評価
密封性能は部品としての総合判定であり、実装状態に近い形で評価する。気密試験(リークテスト)は、加圧または減圧した被検体の圧力変化を差圧式・直圧式で測定する方法が一般的で、水没気泡法(bubble test)は簡易な定性的確認に用いられる。より微小なリークにはヘリウムリークディテクタ(質量分析式)が適する。耐圧試験は所定圧力を一定時間保持し、破損・著しい変形・漏れの有無を確認する。流体の選択(空気・水・作動油)は実使用を踏まえて定める。加圧時の試験片の固定・保護と、破壊時の飛散対策が安全上必須である。測定前に温度を安定させないと差圧に温度ドリフトが乗り、誤判定につながる。判定は「規定時間内の圧力降下が許容値以内」または「漏れ量が規定値以下」の形式で行う。
判定基準と関連規格(JIS・ISO・ASTM)
材料試験の基本規格として、JIS K 6251(引張)、JIS K 6253(硬さ)、JIS K 6262(圧縮永久ひずみ)があり、国際的にはISO 37、ISO 48、ISO 815が対応する。ASTMではD412(引張)、D2240(硬さ)、D395(圧縮永久ひずみ)が広く用いられる。ゴム材料の分類・呼び方としてはASTM D2000が代表的で、硬さ・引張強さ・耐熱・耐油の等級を型式コードで指定できる。密封部品の気密・耐圧は、配管フランジ用ガスケットでJIS B 2404、OリングでJIS B 2401等の部品規格が参照されることが多い。FT-IR・GC-MSによる組成分析は機器分析の一般手法として実施され、規制物質の溶出評価は水道用途ではJIS S 3200系列、食品接触用途では食品衛生法の試験法に基づく。判定値そのものは、図面・仕様書または双方合意の受入基準に従い、規格番号とともに報告書へ明記する。
FAQ
シール材(ゴムパッキン)の検査報告書には何が記載され、どこで使えますか?
報告書には通常、試験項目(引張・硬さ・圧縮永久ひずみ・組成分析・気密性等)、適用規格(JIS・ISO・ASTM)、試験条件、測定結果、判定基準に対する合否が記載される。受入検査、代替材選定、経年劣化の原因究明、クレーム対応などに用いられる。
ゴムパッキンを検査機関へ依頼する際の流れと確認事項は?
検体(成品・使用済み品・ダンベル片の別)、数量、使用環境(温度・圧力・接触流体)、評価したい項目と照合すべき基準を先に伝える。前処理の可否や試験片の切り出しが必要かを相談し、納期と報告形式を確認してから依頼する流れが標準的である。
シール材検査の費用は何で変わりますか?
項目数、試験片の作製要否、恒温恒湿などの長時間を要する条件設定、GC-MS等の機器分析の有無、検体数が主な要因になる。圧縮永久ひずみや耐圧保持試験は時間がかかる分、単価が上がる傾向がある。
