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アフリカ豚熱検査

材料試験2026-11-02

アフリカ豚熱(ASF)は豚およびイノシシに重篤な症状を引き起こすウイルス性感染症であり、ワクチンが実用化されていないため、早期診断と迅速な撲滅措置が防疫の要となる。アフリカ豚熱検査は、ウイルス遺伝子、抗原、抗体という三つの検出アプローチを軸に構成され、罹患動物の確定診断から潜伏期・回復期個体のスクリーニングまでを幅広く担う。本稿では、検査対象と検体の採取・前処理、リアルタイムPCRによる遺伝子検出、ELISAによる血清学的検査、検査法の感度・特異度と判定基準、さらに検査の適用場面と防疫上の意義の順に、実務的な手順と留意点を解説する。

アフリカ豚熱(ASF)検査の概要と検査対象

アフリカ豚熱はアフリカ豚熱ウイルス(ASFV)による感染症であり、豚とイノシシが感受性動物となる。他の動物種やヒトへの感染は知られていない。検査対象は、症状を呈する豚の組織・血液、死亡例の剖検材料に加え、野生イノシシの hunting サーベイランスで得られる検体まで含まれる。検出目的は二つに大別される。一つは急性期のウイルス検出(遺伝子・抗原)であり、発熱、食欲廃絶、皮膚の発赤、出血性病変を示す個体の確定診断に用いる。もう一つは抗体検出であり、感染後期や回復期個体、流行地域での感染歴の把握に用いる。国内清浄状況では、疑い例の迅速な確定診断が防疫対応の出発点となるため、検査体制と検体搬送経路をあらかじめ整備しておくことが求められる。

検体種類と採取・前処理方法

遺伝子検出に適した検体は、脾臓、リンパ節(特に胃リンパ節・腸間膜リンパ節)、扁桃、腎臓、血液である。ウイルス血症期の血液や血清も高感度な検出材料となる。剖検時は汚染を避け、臓器ごとに滅菌器具を用いて採取し、無菌容器に個別封入する。検体は冷蔵または凍結で速やかに検査機関へ搬送する。常温放置はウイルス核酸の分解を招くため避ける。野生イノシシのサーベイランスでは、筋肉組織や血液浸出液を検体とする方法が採られることがある。前処理では、組織検体を滅菌生理食塩液またはPBSに懸濁し、ホモジナイズした後に遠心分離を行い、上清を核酸抽出に供する。採取記録には、動物識別情報、採取日時、部位、臨床症状を必ず併記する。これにより検査結果と疫学情報を突き合わせた解釈が可能となる。

PCRによるウイルス遺伝子検出(リアルタイムPCR)

遺伝子検出の中心は、蛍光検出によるリアルタイムPCRである。プライマーと蛍光プローブはウイルスゲノムの保存領域(例えばp72遺伝子領域)を標的とする系が広く用いられる。核酸抽出にはシリカメンブレンカラム法や磁気ビーズ法が選択され、抽出後ただちに増反応へ移行する。増幅プログラムは一般的な逆転写を要しないDNAウイルス向けの設定で、陽性対照、陰性対照、抽出工程の内部対照を各回に配置する。Ct値の読み取りに際しては、増幅曲線の形状を視認し、非特異的シグナルとの区別を行う。判定は対照が正常に機能したことを前提とし、再検査の要否を判断基準に従って決定する。汚染防止として、検体の前処理、核酸抽出、試薬調整、増幅の各工程を物理的に区分することが基本である。

ELISAによる抗体検査と抗原検査

抗体検査には、組換え抗原または不活化抗原を固相に用いたELISAが用いられる。血清を wells に分注し、規定の温度・時間で反応、洗浄、酵素標識抗体の添加、基質発色という一連の工程を進める。発色度をプレートリーダーで吸光度として測定し、陰性対照・陽性対照の値と比較して判定する。抗体は感染後の産生までに一定の期間を要するため、急性期単独では検出できない点に注意する。一方、抗原検査は組織または血液中のウイルス抗原を検出する手法であり、大量検体の一次スクリーニングとして扱われる。ELISA系キットは多数の血清を並行処理できる点で利点を持つ。ただし、陽性と判定された血清は、確認として別原理の検査(免疫クロマトグラフィー、免疫蛍光法、またはPCR)に再検体を供する運用が一般的である。

検査法の感度・特異度と判定基準

各検査法は感度と特異度の特性が異なるため、検査目的に応じた選択が重要となる。リアルタイムPCRは検出感度が高く、発症初期の低ウイルス量検体にも対応できる。一方、検体の状態や核酸抽出の質が結果に影響するため、内部対照による工程管理が不可欠である。ELISA抗体検査は大量検体の処理に適するものの、感染後まもない個体では陰性となる可能性がある。判定基準は各検査法の定めるしきい値に基づき、吸光度比またはCt値を区分して陽性・疑陽性・陰性に分類する。疑陽性は直ちに再抽出・再検査を行い、可能であれば別標的領域のPCRまたは別原理の血清学的検査と突き合わせる。単独の結果での最終判断を避け、臨床症状、剖検所見、疫学情報と照合した総合判定とするのが原則である。

検査の適用場面と防疫上の意義

適用場面は、発生疑い例の確定診断、発生農場周辺の濃厚接触動物の調査、野生イノシシの流行状況把握、肉製品や食残渣を介したウイルス拡散の監視に及ぶ。空港・港湾での没収肉製品からの遺伝子検出も、侵入経路の分析に用いられる。検査結果は、殺処分・移動制限・消毒範囲の設定といった防疫措置の発動基準として機能するため、迅速性が要求される。特に、発熱などの臨床症状が現れてからの対応遅れはウイルスの拡散を招きやすく、早期の検体採取と検査依頼が撲滅の成否を左右する。清浄国においては常時のサーベイランスと初動検査体制の維持が、発生時の被害軽減に直結する。検査は診断手段であると同時に、防疫判断の根拠を与える中核的手法である。

FAQ

アフリカ豚熱検査ではPCRとELISAのどちらを選べばよいですか?

検査目的と検体の状態で使い分けます。生き残り豚や死滅豚の臓器・血液などからウイルス遺伝子を検出する場合はリアルタイムPCRが適します。一方、既往感染やワクチン接種歴の推定には血清を用いるELISA抗体検査が適します。疑陽性の確認などでは両者を組み合わせることもあります。

アフリカ豚熱検査の陽性・陰性判定は何を基準に行いますか?

リアルタイムPCRでは増幅曲線の有無と Ct 値が判定の目安となり、ELISAでは吸光度に基づくカットオフ値により陰性・陽性を区分します。ただし感度・特異度には限界があり、偽陰性・偽陽性も生じ得るため、判定は検査法の特性を踏まえ、複数検査や再検査で確認するのが原則です。

アフリカ豚熱検査はどのような材料・場面に適用できますか?

適用範囲は豚の臓器組織、血液、血清、口腔・肛門拭い液など多様な検体に及びます。発生農場での診断、発生疑い事例の確認、防疫措置後の浄化確認、常在国からの侵入監視など、防疫上の幅広い場面で実施されます。検体の採取・前処理を適切に行うことが検査精度の前提となります。